パンクを直したぼくらはレイクパウエルへ行き、遊覧船に乗った。湖はとても大きかったが、水は汚く、大したことはなかった。
船の上で写真を撮ってもらったモロッコから来たという女性と少ししゃべった。彼女は19歳だという。とてもセクシーな格好をしていた。
でも、かわいくなかった。
写真を撮ってくれというのでカメラを向けると、彼女はカメラ目線をせず、腰掛けたまま横を向いてポーズをとっていた。
昔、うちのばあちゃんが同じことをよくやってた。
少し面白かった。なに気取ってんだ、こいつ。
レイクパウエルを離れ、いよいよグランドキャニオンへ向かう。グランドキャニオンは谷が東西に走っており、それをはさんで北側と南側に分かれている。
我々はとりあえず北側から攻めることにした。山道をどんどん上っていく。
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グランドキャニオンへようこそ!
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三時間くらい走っただろうか。地図によるともうだいぶ近くなってきているはずだ。珍しく快調な進み具合に気分も上々。
そんな我々の前に一つの看板が姿をあらわした。
「通行止め」
その一枚の無機質な板っ切れは、我々を絶望のどん底に叩き落すのに十分だった。
「なぜ・・・」
理由は明らかだった。その看板の向こうは一面雪が積もってて道は完全に埋まっていた。
「またか・・・」
ぼくはため息をつきながらガイドブックに目を通す。
「グランドキャニオン北側は10月中旬から5月中旬まで閉鎖。」
同じことを何度も繰り返す進歩のないぼくら。来た道を戻り、大回りして南側に向かうしかなかった。
グランドキャニオン国立公園に入った頃にはもう夜中になっていた。泊まるとこを探すがどこも値段の高い部屋しか空いてない。仕方なくその日はキャンプ場で車中泊することになった。
疲れやらなんやらでイライラしていたぼくは、自分を落ち着かせるようにトイレに向かった。
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ようやくグランドキャニオンに立つ
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疲労と眠気でぼ〜っとしていた。その時、
「ビチャッ」
不意に、変な感じがした。やな予感がして下を見ると、トイレが詰まっていて、床にションベンの海ができていた。そしてぼくのお気に入りの白いラバーソールが3cmほどそこにつかっているのである!
「うわぁぁぁぁぁーっ!!」 ぼくは発狂した。
3月22日(木)
朝8時前、あまりの暑さで目がさめる。いやな汗をじっとりかいている。最悪の目覚め。顔はベトつき、コンタクトは目に張り付き、髪はぼさぼさ。
だるい体を奮い起こしてグランドキャニオンの景観スポットをまわる。
グランドキャニオン。大自然が作り出したすばらしい芸術。ずっとテレビの向こうでしか見れないと思っていた世界。まさか自分がそこに行くことができるなんて思ってなかった、聖域。
しかし、疲れきったぼくの心にはその感動は届かなかった。どこまで言っても同じ景色。谷はもういいよ。人里が恋しい。早く街へ帰りたい。
もっとベストの状態で来れれば違った感動があったのかもしれない。勢いに任せて突き進むのもいいが、やはりちゃんと計画を立てることは必要だ。そう痛感させられた。
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最後にグランドキャニオンの美しい景色をどうぞ。もっと一面真っ赤な岩なのかと思ったら結構緑や雪があってイメージと違った。
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一通りまわった後、再びラスベガスへ向かった。あのベガスのネオンが、喧騒が懐かしくてしょうがない。一刻も早く帰りたかった。
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