3月24日(日)
ここまで僕らの足として頑張ってくれたレンタカーとお別れの日だ。ちょっぴり淋しかった。
これからは大幅に旅の自由度が減り、泊まる場所がないからといって車中泊もできないし、公共交通機関を使うので時間に遅れたりもできない。俄然、計画的な行動が必要となってくる。
計画性・・・その言葉を考えただけでため息が出てきた。
ここからは長距離移動はバスになる。グレイハウンド・バスはアメリカの一般的な観光バスである。僕らはそのチケットを買いに行った。
ラスベガスからサンフランシスコまでは、約17時間。出発はこの日の午後3時、つまりバスの中で夜を越すことになる。
「地獄の深夜バス」
北海道ローカルの某バラエティー番組でよく登場するあれだ。それに乗るたびに出演者は毎回ぐったりやられているのである。あの罰ゲームのように登場する深夜バスに自分達も乗ることになったのだ。
しかも、移動時間において、番組で深夜バスの帝王として恐れられている「はかた号」を遥かに凌駕している。
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これがアメリカの長距離バス・グレイハウンド
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バスに乗り込む。乗ってみて気付いた。番組で見た日本の深夜バスは横三列で通常のバスより多少席が広かったが、我々が乗ったのは横四列の通常のバスと同じものだった。
狭く、暑苦しいそのバスの中で眠れるはずもなく、疲労とイライラは確実に蓄積されていった。
途中、ロスのバスステーションで乗り換えだった。僕らは列に並んで次のバスを待っていた。その時である。
「臭っ」
どこからか、猛烈な刺激臭が漂ってきた。それはどう考えても「ウ○コ」の匂いだった。耐えられないくらいの目にしみるようなバッドスメル。
「どこだ・・・」 ぼくは匂いの出所を探り、あたりを見回す。
我々の後ろにいたのは若い黒人二人組。どうやら彼らではないようだ。 その時、その匂いが背後からきているような気がした。恐る恐るふりかえる・・・。
「うくっ・・・・・・!」
すぐにわかった。その匂いは我々の前に並んでいたオッサンから発せられていた。疲れ果てたぼくにはあまりにも強烈過ぎるその匂いで失神寸前。鼻を抑えずにはいられない。
「お前、鼻が曲がってるぞ」
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サンフランシスコに行く途中の寂れた駅。 でもいい雰囲気。
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鼻が曲がるような匂い、という表現があるが、抑えすぎでぼくの鼻はホントに曲がっていた。
周りの人もその異臭に気がついたようだ。後ろにいた黒人二人組の陽気なほうがオッサンに鼻を近づけて「クン、クン」と匂いをかいでいる。自殺行為だ。
そしてもう一人に向かって言う。
「あれはなんだ?」
そのもう一人のほうはすでに布を鼻に当てて涙ぐんでいた。
「このオッサンと席が近くになりませんように・・・」
ぼくはただただ祈るばかりだった。
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