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TRAVEL NOTES (U.S.A)
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 グランド・サークル2

 

警官は我々の乗った車の窓をたたいて開けさせた。そこに立っていたのはわりと若い警官で、やさしそうに見えた。

しかし、だまされてはいけない。

期待して裏切られるとショックが大きいので、最悪の事態を考えるようにする。

警官は我々の顔をじろじろみて、「日本人か?」と尋ねてきた。
イ、イエァー」 情けない中途半端な返事をする。
「旅行で来たのか?」
イ、イエァー」 
「パスポートと国際免許証を出しなさい」


警官はそれらを受け取り、パトカーの中に戻ってなにやら書類を書き始めた。ああ、我々はこれからどうなってしまうのだろう。

しかし、運転してたのが自分じゃなかったので多少気が楽だった。ま、逮捕されたりはしないだろうから安心しろや。ぼくは心の中で運転してたやつに向かって言ってた。 


しばらくして警官が戻ってきた。
「今回は注意で済ませておくから。気をつけてゆっくり行きなさい。」

それを聞いて、運転してなかったぼくともう一人はほっと肩をなでおろす。

「オーウ、イエァー」 運転してたやつが言う。相変わらずみっともない発音だが。

それにしてもよかったよかった。一時はどうなることかと思ったが、さすがアメリカ人は心が広い。運転してなかった二人は警官に礼を言って、さあ、出発。

しかし、運転手はなぜかなかなか発進しようとしない。警官も変な目でこっちを見ている。
「なした?」
「いや、あれ?罰金とかは?」
「・・・・・・・。」

彼は「イエァー」などと威勢のいい(?)返事をしていたが、一連のやり取りを全く理解していなかった。この男(渋谷に行こうと言い出した、空港でお菓子をもらった人物。)の英語のわかってなさは信じがたいものがあった。

残りの二人は思っていた。
「この男は一人だったら絶対やって行けない。」
「俺らがなんとかしてやらないと。」

別に、ヘンな感情が生まれたわけではない。「重たい義務感」に駆られただけである・・・・・

その日は結局、レイクパウエル湖畔のPAGEという町に泊まった。

そこまでの道は、まわりは全て砂漠なのはもちろん、もはや舗装もされてなく、車がトラブったら間違いなく命はないと思われるような所だった。 


レイクパウエルへと抜ける道。現代の先進国にこんな場所があるとは衝撃的

走ること約三時間、国道が見えてきたときは、「生きてるってすばらしいなあ」と思った。

 

3月21日(水)

朝、モーテルの駐車場で、車の異変に気がついた。
「いかん、パンクしている。」

一大事だった。借りたレンタカーはRV車だったが、あれほどの悪路を長時間走れば無理もない。直ちに修理工場へ駆け込んだ。

我々が工場に着くと、190cm、90kgくらいの黒人の大男が仁王立ちをして中からこっちをじいっと見ていた。その手にはピストルのような形をした巨大な電動ドライバーが握られている。戦慄した。

「車をこっちへ回せ。」その男が言う。おとなしくその男の言うとおりにする。男は、重いRV車のタイヤを軽々と取り外し、奥のほうへと消えていった。

「とんでもない額をふっかけられたらどうしよう。」

あのアーネスト・ホーストばりの大男が怒って襲いかかってきたら我々には勝ち目は全くない。あのドライバーでメッタ刺しにされて・・・ヘンな想像が頭をよぎる。

修理工場にて
パンクした我らが愛車 

五分ほどして彼が出てきた。その手には3センチくらいのネジが持たれていて、「こんなのが刺さってたぜ。」と、彼はニヤッと笑った。

よく見たらかわいい顔をしていた。値段も安かった。なんだ、ぜんぜんいい人じゃないか。

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