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TRAVEL NOTES (U.S.A)
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 Epilogue

 

3月30日(土) 午前5時30分

眠い目をこすり、出発の準備をする。飛行機の時間は9時30分。国際線では出発の二時間前までに空港に着いているのが常識だ。

タクシーを呼んで空港へ向かう。道はすいていて思ったより早く着いた。

空港の中のマックで朝食をとる。また10時間もあの狭い機内に閉じ込められると思うとひどく憂鬱だったが、今回は帰国できる喜びのほうが勝っていた。

 

同日 午前9:30 (日本時間31日午前2:30)

日本に向け出発。やはり長時間の飛行機は辛い。機内映画だけが唯一の楽しみである。そして4時間後。

「ただいまより、機内映画を上映いたします。本日の映画は・・・」

何でもいい、早く見せてくれ。

「『釣りバカ日誌イレブン』と『ミート・ザ・ペアレンツ』です。」 
「つ、釣りバカ日誌?!

これは予想外だった。まさか国際線でこんなコテコテの日本製コメディー(つ〜か喜劇)にお目にかかるとは・・・。何でもいいとはいったものの、これにはさすがに衝撃を受けた。

しかし、これが予想外に楽しめた。疲れ果てた心にはこんなばかばかしい笑いが合っていたのかもしれない。

注目は「合体!!」が英語の字幕でどう表現されるかだった。もう忘れてしまったが、少なくともdockingではなかった。

続いての映画は「ミート・ザ・ペアレンツ」だ。これは、当時日本で公開中だった、そこそこの注目作である。

しかし、字幕の様子がおかしい。

「いったいどうしたというん
「彼はきっといい人だと思うわ。  

明らかに文字化けしている。磁気嵐の仕業か。

さらに、画面上と字幕が合っていなくて、ロバート・デニーロがしゃべってるのに、
「あなた、どうしましょう」
などと出ているのである。

これが大韓航空の底力というべきものだろうか。

 

日本時間 3月31日(日) 午後12時30分

二週間ぶりの日本、ついに帰ってきた。明日から4月。本州のほうはもう完全な春だろう。やっぱり日本の春が一番だ。

しかし、機内のアナウンスが驚愕の情報を告げた。
「成田空港、天候・・・、気温・・・0度

うそーん!
またしても絶望が待っていた。もうあったかいもんだと思っていたぼくはTシャツに薄いジャケット一枚という軽装だった。

飛行機から出ると冷たい風がぼくを迎えてくれた・・・

 

兎にも角にも、無事(?)帰国することができた。ぼくは横浜の両親のもとで2泊。残りの二人は都内で一泊して札幌に帰る。三人は成田空港で別れた。

JRに乗り込み、横浜へ向かう。こうしてぼくの初めての海外旅行は終わりを告げた。

 

4月3日(火) 午前11時

札幌に帰ってきた。久しぶりの我が家。なんだかいつもより部屋が広く、明るく感じた。心からほっとできる瞬間。

「やっぱり自分の家は落ち着くなあ。この感触、この匂い・・・・・ん?!・・・・・・臭っ

安心したのもつかの間、突然の刺激臭がぼくを襲った。それは、嗅ぎ慣れた自分の部屋の匂いではなかった。しかし、嗅ぎ覚えのある、むしろ懐かしいとも思われる匂いであった。

「まさか・・・・しまった!」

ぼくの視線の先にあったのは、部屋の真ん中に君臨している正露丸であった。

ここで出発前のことを思い出していただきたい。時間に追われて焦っていたぼくは持っていくか迷っていた正露丸を部屋に置きっぱなしにしていたのだ。

ぼくがいない間、こいつは着実にぼくの部屋を蝕んでいたのだ。

 

正露丸を片付け、ベッドに横になる。強烈な匂いはまだ漂っている。これならロシアも倒せるわな。なんてことを考えているうちに眠りに着いていた。

その匂いは2日間取れなかった。

 

−−−−−−−−

最初から最後まで悲劇と苦労とアクシデントに満たされた初めてのアメリカ旅行。

あれから二年以上経った今、他の全てのことのように当時辛かったこと、腹の立ったことなども良い思い出話として語れるようになった。

長期の旅行は、(取り返しのつかない溝を空けてしまう場合もあるが)友人とのかけがえのない絆を生むいい機会になり得る。

我々の場合はたまたま不幸にも前者であったが、いろんなことを学ぶ良い機会であった。

今でこそはっきり言える。またいつかこの旅と同じ道をもう一度歩んでみたい。

ただ、今度は一人でな。

 

―THE END―


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